Workshop 2では「右脳・左脳」という表現が用いられています。
この言い方は、現在の脳科学ではやや古い印象を与えるかもしれません。
しかし結論としてお伝えしたいのは、古いのは表現の仕方であり、考え方そのものは現代の研究と矛盾しないという点です。
今回は、Workshop 2の内容を現在の脳科学の視点から見つめ直し、その先見性と意義に触れてみたいと思います。
「右脳・左脳」は何を説明するための言葉だったのか
当時の教育現場では、脳の働きを説明する一般的な表現として「右脳・左脳」という言葉が広く使われていました。
「右脳は創造性、左脳は論理性」といった説明は、今日から見るとかなり単純化されたものとのことですが、当時は広く浸透していました。
ただし、MATメソッド®で「右脳・左脳」という表現を使っていたのは、こうした二分法を主張するためではありません。
仲田利津子が伝えたかったのは、「動作・視覚・聴覚・言語を同時に使うことで、子どもの脳全体が活性化する」という考え方でした。
この考え方は、現在の脳科学が示す「多感覚統合(multisensory integration)」や「身体性認知(embodied cognition)」と一致しており、むしろ先駆的だったと言えます。
ジェスチャーと発話を組み合わせる意味 ― 現代脳科学からの裏づけ
- Embodied Cognition(身体性認知)
身体の動きが言語理解を強化するという理論で、近年の研究でも強く支持されています。 - Mirror Neurons(鏡ニューロン)
人が動作を見て真似するときに活性化する神経細胞で、ジェスチャーを伴う学習が理解と模倣を促進します。 - Multisensory Integration(多感覚統合)
視覚・聴覚・運動を同時に使うことで脳の定着率が高まることは広く認められています。 - Working Memory(ワーキングメモリ)の負担軽減
動作が意味処理を助けることで、子どもは「理解 → 発話」に集中できます。
このように、MATメソッド®が重視してきた「アクションを伴う導入」「動作を使った理解」は、現在の脳科学が裏づける理にかなった方法です。
ジェスチャーはいつまで使う?
ジェスチャーは、生徒の理解と発話を助けるための重要なツールです。
しかしWorkshop 2でも示されているように、成長とともにジェスチャーは自然と減っていきます。
英語がイメージとして理解できるようになるにつれ、生徒はジェスチャーなしでも自分の力でことばを使えるようになるからです。
つまりジェスチャーは、永続的に使うものではなく、自立した言語運用へ導く「橋渡し」の役割を担っています。
そのため、ジェスチャーは決して「暗記」や「符号化」のための道具ではありません。
単語や文法項目に動きを割り当てて覚えさせるのではなく、あくまでその言葉の意味をつかみ、自然に使えるようにするためのサポートとして位置づけられています。
生徒が成長し、ことばをイメージで理解できるようになるにつれて、ジェスチャーは自然と必要なくなっていきます。
Workshop 2は、現代脳科学が示す学びをすでに実践していた
MATメソッド®のWorkshop 2は、当時の教育現場で一般的だった「右脳・左脳」という説明言語を用いていますが、そこで伝えている本質は下記の現代的な概念にそのまま置き換えられます。
- 多感覚統合(Multisensory Integration)
- 身体性認知(Embodied Cognition)
- 鏡ニューロン(Mirror Neuron System)
- 自動化(Automaticity)を促す反復・テンポ
つまりWorkshop 2の内容は、言い方こそ昔のままでも、本質は現代の脳科学が支持する普遍の学びなのです。
表現は変わっても、理念は変わりません
MATメソッド®は脳科学そのものを探求するためのメソッドではなく、
EFL(英語を外国語として学ぶ環境)において、子どもがより効果的に英語を身につけられるよう設計された “教授法”そのものです。
Workshop 2 を学ぶ際には、こうした現代的な補足を意識しながら、 35年前から変わらず大切にされてきた理念に触れていただければ幸いです。
IIEEC英語教師トレーニングセンター代表
黒田 昌代